特徴から見極める支援パートナー – Webアクセシビリティ支援企業の選び方とタイプ別解説

Webサイトのアクセシビリティ対応が求められる中、「誰に何を頼めばいいのか」という疑問を抱える企業担当者は少なくありません。アクセシビリティ対応は単なるガイドライン準拠にとどまらず、ユーザー体験の向上や社内体制の構築、継続的な運用まで多岐にわたります。

本記事では、それぞれ異なる支援スタイルを持つ企業5社を紹介し、自社に合った選び方の視点を提供します。単に「どの企業が優れているか」ではなく、「どのタイプの支援が自社の状況に合っているか」を見極めるヒントとなれば幸いです。

アクセシビリティ支援企業のタイプ別分類


アクセシビリティ支援企業は、それぞれ得意とする領域や支援スタイルが異なります。大きく分類すると、以下のようなタイプに分けることができます。

ユーザー体験重視型

実ユーザー視点での評価・支援に重点を置き、使いやすさや利用シーンに即した改善を提案します。障がいを持つ実際の利用者によるテストを通じて、実践的な使いやすさを検証し、本質的な改善につなげます。

このタイプのメリット:

  • 実際の障がい者によるユーザーテストで本質的な使いやすさを検証できる
  • 小規模な予算から始められ、段階的な改善が可能
  • 社内メンバーの意識改革に有効(実ユーザーの声が説得力を持つ)
  • 形式的な対応ではなく、実際の利用シーンに即した改善が可能

顧客体験の質を高め、真のアクセシビリティを実現することで、企業の社会的信頼性を高めることができます。このような誠実な取り組みは、ブランド価値の向上と持続的な顧客関係の構築に貢献する重要な差別化要因となります

規格準拠重視型

WCAGやJIS X 8341-3などのガイドラインへの準拠を主眼に置き、診断・改修支援を行います。チェックリストや仕様の正確な理解を重視し、標準規格に沿った確実な対応を進めるアプローチです。

このタイプのメリット:

  • 標準規格に精通した専門家による確かな診断と指針が得られる
  • 法的要件や国際標準への確実な対応が可能
  • 体系的なガイドラインに沿った対応で漏れを防げる

法令対応や国際標準への適合性を確保したい企業に向いています。グローバル展開を視野に入れた事業や公共性の高いサービスを提供する組織にとって、コンプライアンスリスクを最小化しながら信頼性の高いブランドイメージを構築するための基盤となります

運用最適化型

大規模サイトや複合的なデジタル資産を管理する体制に対応し、効率的な品質管理フレームワークの構築を支援します。ガバナンスとシステム化の視点から、持続可能なアクセシビリティ品質を保証します。

このタイプのメリット:

  • エンタープライズレベルでの一元的な品質管理体制を確立できる
  • 多様なステークホルダーを巻き込んだ部門横断的な協業プロセスを構築
  • 長期的視点での保守・改善サイクルの自動化と効率化に強み

多数のページやコンテンツタイプを抱える企業に適しています。複雑な情報資産を管理する大企業や公共機関にとって、一貫したアクセシビリティ水準を維持することで、ブランド価値を高め、幅広いユーザー層からの信頼を獲得しつつ運用リスクを最小化する戦略的アプローチです。

実装主導型

アクセシビリティ要件を効果的に実装する技術的なアプローチを重視します。実装ノウハウと技術的解決策に強みがあり、診断から実装までワンストップで対応できる点が特徴です。

このタイプのメリット:

  • 技術要件の検証から実装ソリューションまで一貫したサポートを提供
  • 最新の技術環境やCMSへの対応に強み
  • デザイン性と技術要件の両立が可能

実務的な課題解決に向いています。新規サイト構築やリニューアルを計画している企業にとって、プロジェクト初期からアクセシビリティを組み込むことで追加コストを抑制しながら、技術的負債を最小化できる効率的なソリューションを提供します。

教育・内製強化型

社内啓発・体制づくり・研修などを通じて、社内にアクセシビリティを定着させる支援を行います。アクセシビリティ文化の醸成を重視し、長期的に自社で対応できる体制構築を目指します。

このタイプのメリット:

  • 社内人材の育成と組織的な取り組み体制の構築ができる
  • 検査体制の確立と継続的な対応力の強化が可能
  • 公的な認証や第三者評価の取得に有利

教育プログラムの提供が特徴で、持続的な対応体制を構築したい企業に適しています。長期的な企業価値向上を目指す組織にとって、アクセシビリティを企業文化として定着させることで、イノベーションの促進と多様な人材活用を実現し、社会的責任を果たす企業としての評価獲得につながります

タイプ別支援企業の紹介

それでは、異なるアプローチの支援企業を5社紹介します。各社の特徴や強みを理解し、自社の状況に合った支援パートナー選びの参考にしてください。

WANT MORE株式会社 – ユーザー体験重視型

WANT MORE株式会社


設立背景と概要
2020年に設立された比較的新しいアクセシビリティ専門企業です。多様な障がい特性を持つユーザーの視点を取り入れた実践的なアプローチが特徴です。

支援アプローチと方法論
詳細な障がい者ペルソナ設計により、様々な障がい特性に応じた対応策を細かく整理しています。このナレッジをベースに、デザイン段階からの問題点チェック、実装後のユーザーレビューという段階的なプロセスで、本質的なアクセシビリティ向上を支援します。ユーザー体験を重視した丁寧な対応が特徴的です。

提供サービスの特徴
中小規模の企業から大企業まで柔軟に対応し、短期間・低コストで効果的な支援を提供できる機動力も魅力です。VALT JAPAN株式会社(15,000以上の障がい者就労支援施設と連携するBPOプラットフォーム)との提携により、様々な障がい当事者にサイトの操作評価を依頼し、実際の使いやすさを検証するサービスを展開しています。

また、アクセシビリティに関する知識と最新情報を発信する専門メディア「Webアクセシビリティ・リサーチラボ」も運営しています。このメディアでは、アクセシビリティの基本から最新動向まで幅広くカバーし、技術面だけでなくデザインやユーザビリティ、法律的視点も含めた総合的な情報を提供。すべての制作者が「あるべき姿」のWEBサイトを作るための知識共有を行っています。

さらに、ユーザーテストの結果をもとに「アクセシビリティ検査証明書」を発行し、サイト上に掲載できるようにするサービスも提供しています。この取り組みにより、単なる技術的なガイドライン適合だけでなく、「実際に障がいのある方がチェック済み」という実効性の高い対応が実現できます。

株式会社インフォアクシア – 規格準拠重視型

株式会社インフォアクシア


設立背景と概要
2004年に設立されたインフォアクシア社は、日本におけるWebアクセシビリティの草分け的存在です。創業者の植木真氏はWAIC(情報通信アクセス協議会 ウェブアクセシビリティ基盤委員会)の委員長を歴任した専門家として知られています。WCAG 2.1の策定にも参加するなど、国際標準にも精通した専門性の高さが特徴です。

支援アプローチと方法論
アクセシビリティ専門コンサルタントによる詳細診断を中心に、自動ツールと目視・操作によるハイブリッド評価手法を採用しています。この方法は技術的な精度の高さで定評があり、規格要件への正確な適合性評価を可能にしています。

提供サービスの特徴
方針策定、ガイドライン作成、社内研修まで包括的なサービスを提供しています。官公庁の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」策定メンバーとしての参画など、公共分野での実績が豊富で、JIS X 8341-3遵守を軸にした確かな指針を提供しています。企業が自社サイトの適合レベルを正確に把握し、規格に準拠した適切な改善方針を定めたい場合に力を発揮する企業です。

SBテクノロジー株式会社 – 運用最適化型

SBテクノロジー株式会社


設立背景と概要
1990年設立(旧ソフトバンク・テクノロジー株式会社)のSBテクノロジー社は、大手IT企業グループの一員として総合的なIT支援を行ってきた実績があります。アクセシビリティ分野においても組織的なアプローチを強みとしています

支援アプローチと方法論
複数のWebアクセシビリティ検査員資格保有者が在籍する品質重視のアプローチが特徴です。資格保有者によるダブルチェック体制で信頼性の高い試験と方針策定を実現しています。特に大規模サイトや複雑な組織構造を持つ企業に対して、ガバナンスの観点を含めた継続的な品質管理体制の構築に強みを持っています。

提供サービスの特徴
JIS X 8341-3:2016に基づく試験実施から方針策定、改善支援、ガイドライン作成、運用サポート、ヘルプデスクまで一連のサービスを提供しています。特にHTMLサイトだけでなく、PDFなどの非HTMLコンテンツのアクセシビリティ対応も可能な点は、多くの企業にとってメリットとなっています。

大手IT企業グループならではの総合力と安定した品質管理体制を活かし、サイト改善・リニューアルまでワンストップで対応できる点も特徴です。専用ヘルプデスクによる継続支援も提供可能で、社内リソースに限りがある企業でも運用面での安心感があります。

株式会社LYZON – 実装主導型

株式会社LYZON


設立背景と概要
2007年に設立されたLYZON社は、Web制作会社として培った開発力を背景に、既存サイトのアクセシビリティ改修や新規サイト構築時のアクセシビリティ対応を支援しています。技術力と実装経験の豊富さが強みです。

支援アプローチと方法論
診断から実装までのワンストップ・フローによる実行力が特徴です。段階的なアプローチを採用しており、まず無料の「達成基準チェックリスト」を公開し、企業が自社でシングルA項目を点検できるよう支援します。その上で「アクセシビリティ簡易診断」、「アクセシビリティ診断」、「サイト改善実装」という流れで、必要に応じたサポートを提供します。

提供サービスの特徴
診断で指摘された改善点を自社のデザイナー・エンジニアが直接サイトに反映できるため、「評価だけ・実装は別会社」となる場合に生じがちな対応漏れを防げる点が強みです。また、ReactやVueなどのモダンな技術で構築されたWebアプリケーションへの対応力も高く、CMS連携も含めた技術支援が可能です。

数多くの大手企業のサイト対応実績を誇り、特にブランドイメージを損なわずアクセシビリティを向上させるためのノウハウを蓄積しています。デザイン性と技術力の両立を図りたい企業に適した支援スタイルを提供しています。

株式会社インフォ・クリエイツ – 教育・内製強化型

株式会社インフォ・クリエイツ


設立背景と概要
1993年に日本IBMの子会社として設立され、2002年に独立した老舗企業です。Webアクセシビリティ検査機関として、2014年に検査機関の国際規格であるJIS Q 17020:2012(ISO/IEC 17020:2012)への適合が認められ、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)による認定を受けています。長年にわたり社内教育や検査体制の構築に力を入れてきた実績があります。

支援アプローチと方法論
トレーサビリティを確保した厳格な検査プロセスと、認定検査員の育成に重点を置いています。単なる技術的チェックにとどまらず、企業内におけるアクセシビリティの文化醸成や、持続的な取り組みのための体制づくりを支援する点が特徴です。検査員の育成にも力を入れており、業界全体のアクセシビリティ向上にも貢献しています。

提供サービスの特徴
診断サービス、研修サービス、コンサルティングサービス、クラウドサービスなど幅広いメニューを提供しています。「AMCC(Accessibility Management Checker Cloud)」などの独自ツールを開発し、効率的な診断と継続的なモニタリングを可能にしています。特に、社内のアクセシビリティ担当者育成や、社内検証体制の構築支援など、内製化を見据えたサービスが充実しており、長期的な体制強化を目指す企業に適しています

自社に最適な支援タイプを見つけるチェックリスト

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「どの支援企業を選べばいいのか」多くの企業担当者が抱えるこの悩みを解決するため、実際の業務課題に即した選定ガイドをご紹介します。以下の質問に答えて、あなたの会社に合った支援タイプを見つけてください。

アクセシビリティ対応で最も重視したいのは?

 □ 多様なユーザーの実際の利用体験と声 → ユーザー体験重視型
 □ 明確な基準への適合と法的要件の充足 → 規格準拠重視型
 □ 大規模サイトの一貫した品質管理と運用効率 → 運用最適化型
 □ 技術的な実装ノウハウとデザインとの両立 → 実装主導型
 □ 社内での持続的な取り組みと人材育成 → 教育・内製強化型

現在の自社の課題は?

 □ 実際のユーザー視点からの検証ができていない → ユーザー体験重視型
 □ 標準規格や法的要件への適合が不明確 → 規格準拠重視型
 □ 大量のコンテンツを効率的に管理できていない → 運用最適化型
 □ 実装面での技術的なノウハウが不足している → 実装主導型
 □ アクセシビリティに関する知識・意識が社内に不足 → 教育・内製強化型

予算や体制面での優先事項は?

 □ 少ない予算から始められる段階的な改善アプローチ → ユーザー体験重視型
 □ 明確な基準に基づいた確実な対応と証明 → 規格準拠重視型
 □ 複雑なサイト全体を効率的に管理する仕組み → 運用最適化型
 □ 技術面での一貫したサポートとソリューション → 実装主導型
 □ 長期的に自社で対応できる体制の構築 → 教育・内製強化型

対象となるWebサイトの特性は?

 □ 顧客満足度や使いやすさを重視するサイト → ユーザー体験重視型
 □ 公共性が高く法的要件への対応が必須 → 規格準拠重視型
 □ 複数部門が関わる大規模・複雑なサイト → 運用最適化型
 □ 新規構築・リニューアル予定のサイト → 実装主導型
 □ 継続的に更新が必要な社内管理のサイト → 教育・内製強化型

組織の方針や企業文化との相性は?

 □ 顧客中心主義と多様性を尊重する方針 → ユーザー体験重視型
 □ 明確な基準と客観的評価を重視する文化 → 規格準拠重視型
 □ 効率的なプロセスとガバナンスを重視する体制 → 運用最適化型
 □ 技術革新と創造性を重視する文化 → 実装主導型
 □ 人材育成と内部知識の蓄積を重視する方針 → 教育・内製強化型


チェックが最も多かった支援タイプを参考に、各社のサービス内容をさらに詳しく調べてみましょう。重要なのは、自社の優先課題や現状のフェーズを明確にし、それに最も適した支援タイプを選ぶことです。

まずは相談から始めましょう

アクセシビリティ対応を成功させるためには、自社の課題や目標に合った支援スタイルを持つパートナーを選ぶことが大切です。そして、どのタイプを選ぶにしても、最終的には多様なユーザーが実際に使いやすいと感じるサイトづくりが目標となります

実際のユーザー体験の向上を重視するなら、WANT MORE株式会社が提供する「ライト診断サービス」がお勧めです。実際の障がいのある方による評価を通じて、効率的に課題を発見できます。自社サイトの現状を把握したい方はまずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。